2021/06/13

似合うものの選び方

【お知らせ】

hum staff blogは、hum公式サイト"Journal"に移行いたしました。



こんにちは、小西です。



shop managerの岩崎から聞いた話です。

「華奢なブレスレットをお探しのお客様。お手持ちのジュエリーも華奢なデザインばかりとの事。

まずはご要望に沿うようなものをご紹介すると、もちろんお似合いになり、反応もまずまず。

ふと、お客様の目線がhumeteチェーンブレスレットに向けられている事に気付いてショーケースからお出ししようとすると、『気になってはいたけど大丈夫です。多分似合わないから・・・』。

気になるならご試着だけでも、とお着けいただくと、一瞬にして目の輝きが変わって笑顔がはじけました。

ボリュームのあるデザインはなんとなく避けていらっしゃったようだけど、いざ着けてみるとすごくお似合いになった。お客様の新しい可能性が開けた瞬間でした」


皆さまも同じような経験が一度くらいあるのではないでしょうか。

「似合わないかもしれないもの」を試すのって、勇気とエネルギーが要りますよね。

試した結果似合っていればいいんだけど、似合わなかった時は少しがっかりしてしまったり、時間や労力を無駄にしたような気になります。だから、これまでの経験を踏まえて「似合わない可能性が高いもの」を避けるようになっていきます。 

こちらの記事で「対面販売から生まれるもの」について書きましたが、お客様のチャレンジのハードルを下げることも、私達販売員の役目です。

岩崎の話に限らず、ハードなデザインに抵抗があったり、シルバーは似合わないと思い込んでいる方は少なくありません。humeteチェーンブレスレットはそのような方でも似合いやすいので、思い込みは一旦置いておいてまずは一度ご試着を、とご案内しています。


それから、「似合わない」ものを「似合わせる」工夫もします。

これはhum HANKYU UMEDAの大谷から聞いた話ですが、ピアスをお探しでhum特有のホワイトゴールド×ブラウンダイヤの色味を気に入られたものの、実際に着けてみると少し寂しい印象になるというお客様がいたそうです。そこで大谷は、お顔映りの良いイエローゴールドのフープピアスをご紹介しながら、二つ目のピアスホールにホワイトゴールド×ブラウンダイヤの一粒ピアスを重ねるスタイリングを提案。お客様が直感的に「良いな」と感じられたお色味を、上手く取り入れていただくことができたようです。


コーディネート術に限らずhumの特色であるカスタマイズを活用したり、ほんの少しの工夫で「似合わせる」ことができるのですが、自分ひとりで選んでいるとそこまでわざわざ考えなかったりしますよね。

それに「似合わせる」というのは、何もこのようなテクニックだけではありません。

もっと根本的な気の持ちようみたいなところを、お話ししていく中で解消できることもあります。


つい先日、長年ご愛顧いただいている顧客様から出た名言があります。

「似合う似合わないは、自分次第」

たとえ似合わないと思っても、自分はこれが好き!と思って着けることができればそれで良いし、もはや似合っていると言えるのでは?というお話でした。

私がお客様のジュエリー選びをお手伝いするときはその視点を欠かさないのですが、いざ自分のものを選ぶときには客観的な視点が持てずに「これは私には似合わない」と片付けてしまいがちです。本質的なことをお客様から言っていただけて、我に返った出来事でした。

タイトルの「似合うものの選び方」ですが、やはり自分が「良いな」と感じる心の動きを大切にするに越したことはないと思います。


もう一つ、これは特にhumを知ってまだ日が浅い方へお伝えしたいのですが、humのジュエリーは他のジュエリーと根本的に違う部分が多々あります。

humeteチェーンブレスレットも、平たく表すと「シルバーのチェーンブレスレット」になりますが、一般的なそれとは別物だと言っても過言ではないほど。

だから、似合わないと決めつけず「まずはお気軽にご試着を」。


、、、とは言え状況的になかなか難しいという方も多いかと思います。

そのような皆様に向けて、オンライン上でも手触り感のある情報や言葉をお伝えするべく、より一層発信に力を入れていく所存でございます。


さて、この度hum公式サイトのリニューアルと同時に、hum staff blogも「Journal」として公式サイトに統合されました。

今後とも変わらぬお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。




今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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公式サイトのリニューアルに際して、去年の3月にブログを始めた経緯を振り返り、Facebookグループにて投稿しました。


2021/06/09

【hum making】神田-vol.7

こんにちは、小西です。


神田の練習記録vol.7をお届けします。

vol.6はこちら


Instagram:@hum_making


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Day 50


今日から、ミル打ちを綺麗にする練習に取り掛かります。


●円を描いて彫って、ミルを打つ練習

和彫り月桂樹リングの側面にも使われている彫り方。

この練習が続いた人はほぼいないらしい…。

きれいな円を彫るのがかなり難しい。1周彫るのに45分とか、そのくらいざらに掛かる。



Day 51


●円の続き

全体的に浅い。もっと深く彫る。

浅いとミルが丸くならず、バリも出やすい。線と線の間は面をなくす。山を作るように。



Day 52


●続きから

まだまだ浅い!もっと深く!!!

円を描くのも難しいけど、深く彫るのも自分の思い切りが足りず、なかなか現状を打破できない。やりすぎてしまう事に対して必要以上に慎重になってしまう。

そしてミル打ちは重なりがち。


ミルが重なる問題→線と線の間に面が残る状態ではなく、しっかり深い線を彫って間を山状にできればミルの重なりが軽減されると、後から気付きました。

ミル打ちは、1つ前に入れたミルの引っ掛かりを利用して隣に打っていくのですが、ちゃんと丸くてきれいなミルを打てていればその引っ掛かりが深くてずれにくい…と、思っています。

(伝わらないと思うので、手書きのメモ添付します)





Day 53


●続き

自分で気付いたことや頂いたアドバイスを反芻しながら、同じ練習をひたすら繰り返す。


単純な練習だから、粗が見えやすい。

比較的誤魔化しの効く八角形をやって上手くなった気になっていたけど、基礎をやってみるとまだまだでした。発見にもなるし身が引き締まります。

本当に年内に商品を彫れるようになるのか?と、一抹の不安も発生します。より一層精進します。



Day 54


●続き

線が太くなってきた。

結構思い切ってやってます。山を作る、絶対!って気持ちでやってます。


貞清さんから「気が狂う練習だから、気が狂わないように気をつけてね。」との事。

まだ気は狂わないけど、肩が凝りやすい(?)気がする。姿勢が悪い。

辛くない姿勢を自分で作っていくことも、上手くなる条件だと思っています。



Day 55,56,57,58


●ずっと、円を彫って、ミル打って、の繰り返し。



Day 59


●諸事情により、ほぼ1週間ぶりの彫り練習

内容はまた同じで、丸く彫ってミルを打つ。

丸く彫っているはずなのに、何故か線が蛇行する…。

貞清さん曰く、1週間空いたら大体2週間くらいやらないと感覚が戻らないそう。私が彫ったのを見て、「心が乱れている」と一言。

頑張ります。



Day 60


●今日も同じ、丸く彫ってミルを打つ

手元が狂いまくって悲惨な仕上がりに…。

貞清さんも裸眼でパッとみて、「あー…」と。

やればやるほどダメになると伝えたら、「それは飽きてるんだよ」とのこと。


飽きを解消するために、全く違う練習をやってみる。

明日からしばらく、文字を彫ってみる事にしました。

5mmくらいの大きさのフォントで、カリグラフィーの見本を元にまず書いてみる→どうやって彫るか自分で考える→実際に彫る。

文字を彫ることに少し興味があったので、楽しみ。




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なんとも地道な練習を積み重ねた10日間でした。

ただただ円を描いて彫るだけの練習。。。不適切な例えだとわかった上で言うのですが、毎日地面に穴を掘り、掘った後にはその穴を埋める「穴掘りの拷問」を連想してしまいました。そう捉えると、「続いた人はほぼいない」「気が狂う練習だから」という貞清の言葉にも妙にリアリティが出てきます。


ただ、この例えが明らかに違うところは「目的意識の有無」ですよね。

神田は同じ練習を繰り返しながらも自分の気付きや周囲のアドバイスを反映させ、より良くするための工夫を続けています。これは目的の無い単純作業ではありません。

とは言っても、やはり「上手くなりたい」という強い気持ちがなければできない練習だとも思います。

改めて彼女の決意の固さをリスペクトしました!


今回個人的に印象に残ったのは、「単純な練習だから、粗が見えやすい」という部分でした。

私の座右の銘のひとつは、18代目中村勘三郎のこの言葉です。

「型があるから”型破り”になれる。型が無ければただの”形無し”」

まさに今神田は、型を身につけている最中なんですね。


しかし、単純な練習を続けて本当に発狂されてしまっては大変です。

次は少しブレイクを挟んで、そこからまた仕切り直してもらえたらと思います。



Instagram:@hum_making




2021/06/06

対面から生まれるもの

こんにちは、小西です。


6月より、平日に限り百貨店の通常営業が再開しました。

早速たくさんのお客様にお越しいただき、ありがとうございます。

皆様がジュエリーを纏った時の高揚感を一緒に感じられるのが何より幸せだと、改めて実感いたしました。


今日のブログは、私が対面販売について考えたことを書かせてもらいたいと思います。



休業期間中は、否が応でも「対面販売は必要なのか」という事を考えてしまいます。

対面ならではの良さだなんて安易に言うけれど、それって結局何なんだろう?ただ自分の仕事を正当化したいが為の言い訳じゃないか?…と。


ただ、久しぶりにお客様とお会いして色々な会話を交わす中で、「対面ならではの良さって、こういう事なのかも」という考えが、少し輪郭を帯びてきたように思います。



お客様の好みや持ち物を正確に把握したり、それに応じた適切な提案をする能力は、おそらくAIのほうが優れています。人間の記憶力には限界があるので、全てのお客様のデータを正確にインプットし続けることは難しい。

ただ「偶然性」を生み出すことに関しては、間違いなく人間のほうが長けていると思います。


インターネット上では、自分が求めている情報に辿り着くのはとても簡単です。しかし裏を返せば、想定している範囲内の情報しか得られないという事でもあります。

これまでの行動がパターン化され、計算機みたいに正解が弾き出される買い物は、スムーズで快適ではあるかもしれませんがちょっとつまらないかもしれません。


それに対して人間同士の対話はというと、想像通りのレスポンスが返ってこないなんて当たり前。自分とは違う相手の意見に触発されたり、それぞれの熱量が互いに呼応して感情が揺れ動いたり、思いもよらぬ方向へ対話が転がっていくことが多々あります。そんな「偶然性」に溢れた体験は、遠回りではあっても充足感をもたらしてくれるし、きっとAIにはできない事だとも思います。



先日とあるお客様へ、休業前にオーダー頂いたリングをお渡しいたしました。

当初はdeco laceのブレスレットが欲しいから価格が知りたいとお立ち寄りくださり、私も言われた通り商品の価格をお伝えするにとどまりました。

二度目に来店された時。ふと思い立ち、お似合いになりそうだから一度着けてみていただきたいとご紹介したリングが、想定外にお気に召したご様子でした。

「ブレスレットが欲しいと思っていたけど、どうしよう?」と迷われる姿を見て、「とてもお似合いですし、思ってもいなかったモノをそれほど気に入られたなら、間違いないのではないでしょうか」、こんな風にお話しした事を覚えています。


仕上がったリングをお渡しした後、「やっぱり今回はブレスレットよりリングにして正解でした」とメッセージを頂き、ふとしたご提案がお客様のセレンディピティに繋がったことを嬉しく思いました。


対面販売ならではの良さって、つまるところ「偶然性」そして「ピュアなコミュニケーション」なんだと思います。この2つが消失してしまったら、対面の必要性も無くなるかもしれません。

humのショップがお客様にとって、想像を超える出会いや自分らしくいられる関係性が見つかる場所でなければと、2度目の休業を経て考えました。


「誰が誰のために、どのように作るのか」を第一に考えているhum。

そんなhumのジュエリーを届ける手法にも、人間味を欠くことはできません。これからも場所はどうあれ、お客様とのコミュニケーションを大切に守っていきたいと思います。それがお客様の心を満たすことに繋がると信じて。

皆様との対話を通して、ジュエリーにまつわる様々な感情を共有できることを、楽しみにしております。




今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


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お客様とhumのエピソードをスナップショットと共にご紹介しております。お客様の数だけ紡がれる物語を読むと、幸せな気持ちを分けてもらえる気がします。ぜひご覧ください!


2021/06/02

【hum making】神田-vol.6

こんにちは、小西です。


神田の練習記録vol.6をお届けします。八角形リングに、2度目の挑戦です!

練習記録vol.5はこちら


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Day 42


●シルバーの八角形リング

前回のメモを見て手順を思い出しながら、彫り進める。

前回の八角形練習の記録はこちら


① けがき(印つけ)→合格◎

② 彫り→ミルの横の線が汚いけど、ミル打ったら消えてしまうので及第点


前回は割と強くけがいたけど、最後の仕上げをする時、けがき線を消すのにすごく苦労した。なので今回はあんまり痕を残したくないところと、残さないと後で大変になるところを思い出しながら印をつけた。

ミルの横の線はストロークが長くて、綺麗に彫るのはまだ難しい(ストロークの長い線が苦手です)。

頭では左手の力を抜けば上手くいくとわかっているのに、癖なのか気付くといつもガチガチに力が入ってしまっている…。



Day 43


●八角形続き S字の彫りから

タガネを立ててオタフクの重みで彫り進めると、彫り跡が綺麗になる。

前回は葉っぱの形がシュッとしすぎたので、今回はふっくら丸みのある葉っぱを目指したところ、ぷりんと可愛らしくなってしまった。


●貞清さんのチェック

S字→もっと滑らかに。彫り直し。

彫り直した後はOKもらえました。


片切り、角の1枚葉のところを2カ所ほど盛大にミスした。他はいい感じ。

それにちょっと怪しい雰囲気になっても、なんとか自分で直せた気がします。



Day 44


●八角形続き

内側のミル打ちまで終えたあと、昨日ミスしたところを貞清さんに修正してもらう。

ミルが柄に干渉してしまった→打つ時にグリグリ押しつけすぎ、ミルが大きすぎる。

ミルと柄の間を彫り直す。外側のミルを打って裏面へ。


before&after(貞清さん修正前と修正後)



Day 45


●表面の外側ミル打ち→裏面

ルーペ使ってミルを打つ練習中。今まで奥から手前に向かって打っていたけど、重なりやすいので、左から右へ打つように。

いつも字を書くときに左→右に流れるからその感覚でやってみたけど、右にミルを持っているんだから右→左のほうが絶対やりやすいなと、打ち終わった後に気付いた。次回から右→左で。


●貞清さんチェック

彫り、ミル横の彫りと直線→OK

線が細くなりやすい角の部分をしっかり深く彫れると、パキッとした印象に見える。


片切りで葉っぱの周りを彫る時、補助線を先に入れることで、一枚葉がえぐれなくなった!

前回は、彫りを入れたらミルを打つスペースが消失してしまっていた。今回は表も裏もまだちゃんと生きています。



Day 46


●葉っぱの先端を尖らせる修正

ミルの線から彫り直しを入れる感じ。

最初はやり方がよくわからなかったけど慣れたら楽しい。無機質だった葉っぱに、生命力が出たように感じる。


●葉っぱの真ん中の線を入れて→内側のミル打ち

表はミルが大きすぎたので小さくする。ルーペで入れる練習。右→左へ。

入れたら、今度は小さすぎた、、、?



Day 47


●ミルを4号で入れたのが小さすぎたように思い、貞清さんに見てもらう

「4号はちっちゃいな…」とのことで、6号で打ち直すことに。

打ち直すが益々ひどくなる一方。見本で直してもらったところと天地の差、助けを求めて貞清さんの元へ…


●貞清さんからミル打ち直しのアドバイス

リングの内側から線に向かって押す。バリが出るのでぐりぐりしない。

ミルの打ち方も、奥から手前に倒す方法(ミルは横並びになる方向)だと見えないから、右から左に倒す方法(ミルは縦並びになる方向)が良い。ただしミルの先端が爪の間とか指に突き刺さらないように注意(まじで痛いらしい)。


アドバイス通りにやったら、上手くいった。すごい!魔法だと思った。



Day 48


●八角形 彫り・ミル打ち終わり→仕上げ


貞清さんから、ミルもっと丁寧になると良いねとのことで、次回はミルの練習へ。

直線は「まあまあ」良くなってきたらしい…?


仕上げの段階で、結構消えてしまう線がある。もっと深く彫る。


●森山さんから八角形の講評

・線の強弱が弱い

・比率が変わっても空間に収まる絵は一定にできるよう(これが絵が書けるということ)、練習する


2回目の八角形は、前回の良くなかった部分を良くしていこうと思ってやりました。

葉っぱの形がふっくらするように、ミルを打つスペースを無くさないように、角の一枚葉をきれいに残せるように。この辺りは工夫して改善できたと思います!

今回貞清さんから言われた新たな課題は、ミル打ちの完成度です。次から練習していきます。


左が前回(約2か月前)、右が今回


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神田の言う通り、今回は葉っぱの形がふっくらして、一枚一枚が粒立って見えるようになりました。同じ柄でも、彫り手が「どう彫りたいか」の違いがこんなにはっきり表れるとは、驚きです。月桂樹の模様に躍動感があって、私は今回の方が断然好きです!


前回は一枚葉の形を「削りすぎてしまう」事があったようですが、それも今回目立たなくなっています。補助線を先に彫るという工夫が功を奏したようです。

苦手意識のあるストロークの長い線も、少しずつ克服していけると良いですね。


ミル打ちはシンプルな装飾だからこそ、技術の差がわかりやすいですよね。

美しく粒の揃ったミルが打たれると、全体の雰囲気が格段に良くなると感じます。

次回はミル打ちの練習。頑張ってください!



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Maira Gall